ちょっと前に書いたe-learningとやらをやっていて、改めて紙の良さを認識した。
例えば、e-learningで何かテストをやっていたとしよう。一問目に答えた後、クリックして次の問題に飛んだら、こんな文字が目に飛び込んでくる。「第一問の答えを踏まえて、解答をしなさい。」
第一問で問われていたのが定性的な問題であったら、これでも支障はない。いくら記憶力に自信のない私でも、答えを出すのに全く問題はない。
ところが第一問は、P/LやB/Sの数値を穴埋めする問題だったらどうだろう?答えた数字を記憶しているだろうか?記憶のいい人ならできるかもしれないが、答え以外のもともと書いてあった数値を全部覚えている人などいないだろう。
そういう場合はどうするか?
「前ページに戻る」ボタンをクリックして、いちいち前の問題に戻らなければならない。「だったら最初からそう知らせてくれよ!」と思う。(第一のいらいら)
前問を確認して、第二問に戻ったらせっかく一問だけ解答しておいた内容が白紙に戻っている!。(第二のいらいら)
数問解いてゆくうちに、結局、紙と鉛筆を用意して、解いた内容を書き写してゆくことになる。こりゃe-learningじゃなかったのか?(第三のいらいら)
ここまできて、テストは鉛筆を使って、あらかじめ問題が印刷してある紙と、解答用紙と計算用紙が用意された形式が、やっぱり受験生には一番ストレスをかけないということが、よくわかった次第だ。
それではいらいらの本質は、何だろう?
それは問題に要領よく解答してゆくという、本来の作業を中断させられたことだ。思考の過程をぶつ切りにされては、受験生はたまったものではない。
それではなぜ、本来の作業を中断させられたのだろう?
問題はWeb画面の構造にある。ハイパーリンクで、別のページとリンクが貼ってあっても、操作する人はどのリンク先へどのような目的で飛ぶのかが自分の中で明確になっていないと、操作ができない。そんなことを意識しながら、本来の思考を続けてゆくのはなかなか難しいことだ。
紙は違う。どこかにそんなことが書いてあったなと思ったら、「適当に」ぱらぱらとページをめくってみればよい。ましてテストの問題など、どこに参考資料が書いてあるかなど、いちいち意識しなくてもすぐにわかる。
数年前、あるパッケージソフトを導入した時に、間接材の電子カタログを作成した。その時には私も電子カタログが紙カタログに取って代わるだろうと、思っていた。
しかし、その考えは1年ほどで180度変わった。
オフィスワーカーしかおらず、エンドユーザーが文具やチケットしか購入しない企業なら、電子カタログでも良いかもしれない。しかし、現場を抱えたメーカーではどうか?
普段パソコン上ではなく、現場で仕事をしている人間がエンドユーザーである以上、操作自体を意識しなければならない、電子カタログなどまどろっこしくて見ないはずだ。同じ内容のうまく分類された紙カタログの方が、なじみがあり、ずっと使いやすい。
そう仮説を立てて、間接材購買システムを導入する次の機会に、電子カタログと同期した紙カタログ(事実はその逆だが)を配ったら、間接材購買システムでの購買実績は一挙に四倍近くまで膨れ上がった。ちなみに紙カタログを渡さなかった、品物のオーダーは殆ど皆無に近い体たらくだった。
という訳で、今でも紙は偉大なのだ。