これを読み終えた昨日の夜、ちょうどケーブルテレビで「上意討ち 拝領妻始末」をやっていた。ご存じない方も多いと思うが、この奇妙な題名の映画は、殿様の勝手で側室を押しつけられた家臣が、上意という名のわがままに翻弄される悲劇を描いた傑作である。三船敏郎が主演だが、記憶に間違いがなければ、加藤剛主演でドラマ化もされたはずである。
そのドラマの方で印象に残っているのが、ラストシーン。
結局、側室の生んだ子がお世継ぎになり、側室はまた殿様に召し上げられる。その後いろいろあって、結局側室と家臣は死に、残った隠居(家臣の父)が討手を切り捨て切り捨て叫ぶ。「お上理不尽!」
理不尽であろうともルールはルール。そんな世の中に我慢に我慢を重ねたあげくに、息子と嫁の命を奪われた。失うもののなくなった隠居の悲痛な叫びは心を打つ。実に日本人的な美学である。
で、それは美学に過ぎず、国際的に通用するルールではない、というのがこの本の主旨と言ってよいであろう。これ以上中身に触れることは慎むこととするが、一読の価値があると思う。
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