男性陣はその頃所属していた、あるスポーツサークルの面々。これはいつものパターンである。しかしその日の女性陣の一人がひと味違った。
二次会でふと気がつくと、その女性と激論になっていた。一次会では全く話した記憶がないのに、なぜか夜更けの小洒落た飲み屋で、その女性と言い争いをしていたのだ。いろいろな意味で若気の至りと言う他はない。
何の話で激論になっていたのか?
正確なところは忘れたが、その女性は二十代前半にして「片親を無くし、もう一人の親の面倒を見ながら、会社をやめて家業を切り盛りしている」というような、壮絶な体験をしたというのである。それなので、彼女は「私はもう既に人生の苦労は全て分かっている。その上で言うが、あんたは甘い!」と私に言うのである。
こちらはカチンときて、「俺もそうだが、二十歳とちょっとで人生分かったようなことをいうんじゃない。そんなこと生きてみなきゃわかんねえじゃないか」と食ってかかったのである。(またしても若気の至り)
そのうちに電車がなくなってしまったのであるが、なにも色っぽい展開にはならず、タクシーが捕まるであろう時間まで、延々と言い争いを続けるはめになった。そして彼女が去ると、隣であきれていた先輩のアパートで二時間程過ごし、そのまま出勤したのであった。(若かったなあ)
いやいやそんな話はどうでも良いのであるが、今日ふとこの出来事を思い出して、その時の自分の言葉の正しさと、嘘くささを改めて思うのである。
やっぱり生きてみなきゃ、人生は分からないとは思う。でも、それからずいぶん生きたからといって、人生の何が分かったというのだろう。
人生を悟れるのはいつのことなのだろうか。