法令の改正に関わるセミナーなので、興味の有る無しに関わらず、参加して情報を得なくてはならなかったのだ。
そういう類いのセミナーに参加した方ならお分かりの通りだが、予想に違わず、内容はお粗末なものであった。主催者の挨拶が終わると、役人が渡されたテキストを棒読みして終わり。
パワーポイントすら使わない。
笑いもなければ、見所もない。
唯一、法令改正に関わる知見が得られるというのが、払った参加費用に見合う価値と言えるのだが、不親切なテキストのせいでそれすらも怪しい。
おまけに開始三十分経っても、遅刻者がバラバラと入って来て集中できない!
小声でぶつぶつと文句を言う、危ないおやじと化していたところ、質疑応答が始まった。
少しは面白くなって来たので、帰らずに聞いていると最高の質問をする人が出て来た。要約すると「今日の説明もテキストもさっぱり分からない。今日来ている実務者が法令を遵守しようとしたら、その通りに従えばうまくゆくフローチャートを作って提供してほしい」というものであった。
すると役人は「お役所仕事と言われるかもしれないが、フローチャートを作るのは自分たちの管轄ではないので、それはできない(大意)」とのらりくらりとかわし始めた。
しかし勇気ある質問者(継之助みたいに匿名で、しかもぼかして書くのとは違い、社名も氏名も名乗った上での質問であった!)はひるまずに、「分かりづらい法令の分かりづらい手続きをそのまま押し付けられると、困るのは実務者なのだから、きちんと考慮してもらいたい(大意)」と主張して質問を打ち切った。
一瞬の間を置いて会場の参加者からは大きな拍手が起こった。
役人は思い知ったに違いない。黙って言う事を聞く従順な人だけが、日本に住んでいるのではないことを。黙って言う事を聞いているように思える人の大多数が、本当は心に不満を溜め込んでいることを。
胸がすく思いであった。